近年、IT(Information Technology)がICT(Information and Communication Technology)へと代わり、ビッグデータという言葉が流行し注目を集めています。
書籍『ビッグデータ・ビジネス』によると、ビッグデータとは“事業に役立つ知見を導出するための『高解像度』『高頻度生成(リアルタイム)』『多様・非構造』なデータ”であると定義されています。データサイズの大小ではなく、経営の向上に役立つかどうかが最も重視されており、より高付加価値なサービスや商品の提供、ニーズの変化により柔軟に対応するために、個々のお客様を特定できるほどの詳細なデータを、今までマーケティングの目的では使わなかったようなデータも含め頻度高く分析するようになるため、結果的にデータサイズが大きくなってしまいます。
Suicaやお財布ケータイに代表されるように、2000年代の「電子化・自動化」の流れで、消費者の行動に関する大量のデータが集まりやすくなりました。取得したビッグデータの分析を頻繁に行なうことで、現状のお客様のニーズに合った製品・サービスのラインナップにリアルタイムに組み替えることができるようになるといいます。インターネット上では、Amazonで見られる「おすすめ商品」もビッグデータを活用した事例であり、購入履歴などから得られる情報で購入者のニーズに合うと思われる商品の情報を提供しています。
ビッグデータを活用することで、今まではコストがかかるために一流小売店やホテルなどの高度なサービスを受けられる場面でしか提供されていなかったお客様1人1人に合った「おもてなし」が、一般的な小売店や格安店でも行えるようになると言われているため、ビッグデータは顧客満足度の向上に大きく寄与するということで注目されています。

『ファスト風土化する日本』によると、地方の郊外化が進んだ昨今、人口あたりの犯罪率は地方都市ほど増えているといいます。
犯罪が増える条件として、書籍では「匿名性」と「流動性」という2点が挙げられています。近年では携帯電話などのITツールの発展により1人1人の匿名性が向上し、近所の人の顔は大抵把握していたはずの地方でさえ、ショッピングモールの隣で買い物している人が誰であるか分からないといった状況に陥ります。昨今問題になっている学校の「裏サイト」も、匿名性が生み出した問題点の1つです。
また、交通の利便性が向上することで人々の移動の流動性が高まり、喫茶店で隣の席に座っている人が誰か分からない状況に陥ります。
地方の道路整備が進み、道路周辺に大型ショッピングモールやパチンコ店・カラオケ店などの商業施設が多く建ち、本来は都心部に行かなければ受けられなかったサービスを受けられるようになりました。車での移動が容易になった結果、地方の犯罪率も増加したようです。
一見、都市部でも起こりうる状況ではありますが、都市部の場合は危険な人々が集う地域というものが、暗黙のルールのもとある程度限定的になっています。
一方、郊外化した地域には暗黙のルールが存在していないことが多いです。場所性に制約されないことが犯罪率の増加に大きく影響を与えており、日常的に犯罪に巻き込まれる可能性が都心部よりも高いと言われています。現に、警察でも、1992(平成4)年の段階で、地方の犯罪率の増加は郊外化によるものではないかと指摘しています。
交通の利便性が向上することで起こりうることを想定せず、受け入れ側である地方の準備が整っていなかったのです。それにも関わらず道路整備を進めた結果、犯罪率の増加に繋がってしまっているのだと、書籍には書かれています。

ビッグデータの活用が進むにつれ、個々のお客様が何を求めているのかがより詳細になります。お客様個々の興味・関心を知り、今までお客様が知り得なかった商品やサービスをきめ細かく提供することで店舗の売上が向上するというのがビッグデータの素晴らしいところだと言われています。
一方で、『「せまく」売れ! 「高く」売れ! 「価値」で売れ!』によると、売れる商品とは価値がわかりやすいものだと言われています。逆に、価値が分からないものは売れないのです。例えば、安いワインをいつも買うお客様に対して、高付加価値の商品を売ろうと1本数万円するワインをワインの素人に売ろうと思ったときに、いつも安いワインを買っている人は高いワインを買うでしょうか。
高い理由がわかれば購入するかもしれませんが、ワインの素人は産地や生産年度、原材料や原産地から正しく価値を理解できずに購入しないでしょう。一方で、ワインに詳しい人に同じような行動をした場合は、列記したような条件から目の前にあるワインが上質なものであるか・数万円を支払うに値するものであるかを理解し、購入に至るのです。
人は目の前のものを得ることで明確に価値が得られるものについては、借金をしても購入するといいます。しかし、価値を理解するためには商品に関連する知識を消費者が学習する必要があります。
高付加価値の商品を売るためには、消費者の動向を理解するだけではなく、消費者が高付加価値の商品に魅力を感じ、欲しいと思ってもらえるように教育していく必要があるのではないでしょうか。

ビッグデータを用いて、いかに付加価値をつけて高く売ろうとしても、消費者側が学習し、受け入れ態勢が整わないと、高いものは売れません。
「食べログ」や「価格.com」など、現在は口コミサイトが非常に流行しています。大量の情報が氾濫している昨今、消費者には無意識下で「判断したくない」「選びたくない」という心理が働いているといいます。
ビッグデータの解析により提案される商品・サービスを消費者が「判断したくない」「選びたくない」ために、皆がいいと言うもの・いつも買っているものを選ぶのだとすれば、ビッグデータを分析し、活用することで、どんな企業も高付加価値の商品が飛ぶように売れるようになるというわけではなく、むしろその先にあるお客様への価値の教育に重点を置くために活用する必要があるのではないかと感じています。